法人成りとは

法人成りは手続きとして、次の7つのステップを踏むことになります。 ❶その個人事業の帳簿の閉鎖残高を作成し、

❷税務署に個人事業の廃業届をだし、

❸引継ぐ会社登記をして

❹帳簿の開始残高に個人の閉鎖残高の資産と負債のうち必要な項目を時価で引継ぎ、

❺税務署に法人開設届等を提出します。

❻年央で閉鎖した個人事業の確定申告は翌年3月15日の期限内に、閉鎖時までの所得を申告し、

❼法人に引継いだ時価が閉鎖残高を上回るケースでは譲渡所得として同じ確定申告時期に申告することになります。

◆高等解説
1 発起人設立による会社設立の経理仕訳
余裕のある人には、上記第❸工程の会社設立時の「経理仕訳」を指南しよう。
会社設立日は実務的にも登記申請日であるのは問題なかろう。

ではその日の仕訳はどうなるのか?
実務を知らない学者や思慮不足の経理パーソンは、(借方)銀行預金(貸方)資本金と仕訳して平気な顔をしている。

借方銀行預金というが銀行と取引のない小規模企業が会社の登記簿謄本を取得できる会社設立当日に銀行に会社の口座開設をしてくれる関係にはない。つまりその学者は借方銀行預金と仕訳せよと言って絵空事の会社設立事務を書籍にすら書いているのである。その解説でば会社設立の経緯として「大味」すぎて、事実とは異なる登記法の大枠解説になってしまっている。経理現場の経理証憑とは食い違っていても、それで良しとしているだけである。
2 定款になんと書いてあるか?
➀ 資本取引
そもそも殆どの小規模会社は発起人設立をするが、資本金取引はそのとき、どうなっているか? 発起人会で決まった定款により、発起人が資本家となって、その発起人の個人口座に、会社の資本金を振込む。この振込行為が、法務局への会社設立申請の資本金の証しなのである。

➁ 会社設立日以前の取引
当日は会社設立日前の取引でが、経理帳簿としては、会社設立に係る重要な経理証憑である。だから、しっかりその事実を仕訳すべきであろう。その仕訳は取引の性格に着目すれば、(借方)発起人銀行口座(預託金)(貸方)資本金仮勘定なのである。そして会社設立登記申請日は(借方)資本金(仮勘定)(貸方)資本金となる。会計システムによっては、会社設立日以前の年月日の仕訳はできないものもあろう。その場合は、会社設立日の冒頭にその仕訳を行い、備考欄に発起人口座への資本振込日を摘要欄に記載すればこと足りる。

➂ 発起人の経費出費記録
発起人に認められた設立日以前の会社経費の出費記録についても、その出費日にその経理証憑に合わせて、(借方)経費(貸方)発起人銀行口座(預託金)と経理することになる。そのような経理処理をすれば、会社設立日の資本金の金額が減ってしまうでばないかという疑問が湧こう。

そのとおりである。事実であるからそれでよい。但し経理記録として、会社設立日の資本取引仕訳は、既に述べたように(借方)資本金仮勘定(貸方)資本金がまず記載される。つまり発起人の経費出費以前の金額が記載されるので、全く問題がない。つまりその仕訳の資本金額は「経費出費で減った」経理処理以前の取引であるから、時系列的に問題が発生しない。その経理処理以後に発起人銀行口座(預託金)が減っても、その口座の金額が減るだけであり、正しい経理実態が記録されることになる。

➂合同会社の定款
なお合同会社LLCの定款作成及びそれに続く資本金取引も同様である。ただ法務局が定款認証を要求していないだけである。税務署への会社設立届には添付書類として、合同会社も定款の提出が必須である。

3 資本金の預託先
次に、資本金の相手勘定たる資金そのものはどうなっているのか?
この時点では銀行であるはずがない。それば発起人銀行口座(個人口座)に預託金となっている。

では会社設立で資本金の相手勘定に会社名義の預金口座がつくれるのかというと、発起人が銀行と付き合いがない小規模会社の場合は、当日の会社口座開設は100%不可能であり、銀行は「良く調査して会社の預金口座を開設するか否かを検討する」と回答することになっている。これが銀行行政の実態なのである。

4 経理はありのままの真実を仕訳する
しかしそれに息巻いてみてもしかたあるまい。銀行は言うだろう。「金融庁からマネーローンダリングの水際行政で銀行による会社の口座開設は厳しく監督されております」と。「フン!」と云いたくなるがそれが現実である。

5 関与税理士の正しい指導
だから関与税理士はどうするか?
その事実を明記して(周知の事実であるから明記する必要もないが)、平気で、会社仕訳として(借方)銀行口座(発起人個人名義の資本金預託金)(貸方)資本金とやる。これば論争において絶対に税務署にもどの財務諸表の読み手にも負けない。つまり発起人個人名義の口座がどうどうと会社の帳簿に掲載されることになるのである。止むをえないではないか?現に当職のこの経理処理に関してどの税務署もクレームをつけた例はない。

6 当職の開き直り
銀行が会社の口座開設をしてくれない限り(別に頭をさげるつもりはないが)、発起人個人名義の預金口座がその会社の財務諸表に記載され、公文書となる。問題はない。

7 会社の開始残高
更に奥の院の会計制度に言及してみよう。
➀形式上の開始残高
上記2の預託金処理は上記3の現場の状況により、裁判所でも覆らないであろう。
この場合、会計制度としては、会社の最初の「開始残高」は、(借方)預託金(発起人個人口座)(貸方)資本金仮勘定である。

➁意味のある実態的な開始残高
しかし実務として法人成りの開始残高を云々するときに、このようなすっとぼけた開始残高は意味がなかろう。だからこれも実務として会社の開始残高は、個人事業閉鎖時の閉鎖残高を基にした開始残高であろう。現に当職は上記➀と合せた開始残高を作成して財務諸表の読み手(税務署を含む)に提出している。もちろん備考に説明文を入れている。

➂個人事業主の個人口座
個人事業時代の代表者の個人口座残高の取扱はどうするのか?
これも会社設立時に会社の銀行預金口座が作られる状況にないのは既に述べた。従ってこの個人口座も行き場をうしなうのである。

だから方便としてその個人事業主の個人口座を、会社の預金口座として計上するのが妥当であろう。そしていつの日か銀行がその会社預金口座を作ってくれたときに(借方)会社預金口座(貸方)個人預金口座という風に振替仕訳をすればそれでこと足りる。この点についても過去数十年、当職の処理に税務署が異議を申し立てた例はない。

8 おわりに
経理は、まず会計原則,会社法(個人事業の場合は商法),税法(国税通則法、通達,国税庁ガイド等)に従って,適法な処理しなければならない。しかし経理実務が銀行行政により会計上の適法を遵守できない場合は、その旨を備考欄に明記して、それなりに筋のとおった会計処理・経理処理をすればよいであろう。良いというよりは止むを得ないと云えば良いであろう。何も悩むことはない。マネロン行政で水際作戦を執る日銀の指揮下にある銀行を非難する必要もないであろう。

当職も財務会計の専門家として更に日々知見を積み重ね、小規模会社の財務経営に関して経理を通じてより有効な支援を提供したいと念願している。以上 2020年9月5日 税理士堂上孝生どうがみたかお

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